ISTORY
#02
湘南アイパークサイエンスカフェの挑戦
最先端の科学をシェアしあう

左:サイエンスカフェ幹事 荒川佑一さん(ラクオリア創薬 主幹研究員)
湘南アイパークサイエンスカフェ
毎週1回ランチタイムに有志の研究者が集まり、最先端の研究を紹介しディスカッションするコミュニティ。
2019年5月入居者600人が集まったピッチの場で、野上さんがサイエンスカフェ立ち上げを呼びかけ、同年7月より活動をスタート。
現在、所属する研究者は300人を超えるコミュニティとなった。
最先端の科学をシェアしあう、
湘南アイパークサイエンスカフェ
企業の垣根を越えて切磋琢磨し合う
研究者コミュニティ
INTERVIEW MOVIE
他社の研究者との
サイエンスディスカッションから
新しい研究の着想を得る
まずは、湘南アイパークサイエンスカフェを立ち上げた理由を教えてください。

サイエンスって一人でやるものじゃないって思っていたんですね。
自分で考えて実験してデータを出していくところは一人でやる部分も多いかもしれませんが、その実験をするに至るまでにたくさん論文を読んで、いろいろな学会に出席して、色んなインスピレーションを受けて、そこで初めて実験に向かっていくんですよね。
湘南アイパークの「響き合え、科学」というキャッチコピーは、すごくいいなと思って見ていたんですけれども、やっぱり現場の研究者がコミュニティを作って、お互い切磋琢磨して、お互いのサイエンスを高め合うみたいなことがあったら響き合っていると言えるんじゃないかなと思ったんです。


サイエンスカフェによって得られるものって何でしょうか。

企業の研究者なので、自社の研究については話せません。すると、普段どういう研究をやっているかが分からないので、どういう研究者かもお互い分からないんです。だけど、サイエンスカフェをやると、公知の論文を使ってコミュニケーションできるので、その研究者がどういうことに興味をもって研究しているのか、どういう研究者なのかということがすごくよくわかるんですよね。
気づきがいっぱいありますし、気づきがあったところから新しい研究の着想が生まれて、自分の研究プログラムに生かすことができるかもしれないし、新しいプロジェクトが提案できるかもしれない。そういうことは多々あると思います。
やっぱり会社の中に閉じこもって研究をしていると、どうしても自分だけの考えになってしまいがちなんですけれども、サイエンスカフェですごい発表されると、この会社すごいな、負けてられないな、切磋琢磨を加速するようなそういうような風土にもなるんじゃないかなと思います。
サイエンスを追究する第二の「居場所」
日本の創薬ベンチャーの先駆けともいえるラクオリア創薬は、創業以来名古屋に本社と研究拠点を置いてきましたが、2023年に湘南アイパークにも新たな研究拠点を設置されました。
どのような経緯があったのでしょうか。

弊社はこれまで低分子創薬※1を中心に行ってきましたが、新たにニューモダリティ創薬※2にも取り組むことになりました。ここ湘南アイパークでニューモダリティ創薬を立ち上げたいと考えました。
大きな製薬会社であれば、色々な技術やファンクションを自社で全て持てますが、弊社は小さいベンチャーですので、自社だけではなく、多くの技術をもっている会社さんと組んで臨床試験に進めていく、オープンイノベーションが大事です。
湘南アイパークには多くのライフサイエンス企業が研究拠点を置いており、さまざまな会社が協力して、共創しています。弊社も、湘南アイパークに拠点を置いて、共創するパートナーを探したり、最先端のサイエンス情報を入手しながら、ニューモダリティ研究を進めたいということになりました。
※1 低分子創薬…低分子薬(主に分子量500以下の低分子化合物で、体内で標的分子を阻害したり、作動させたりすることで、活性を発揮する)を創り出すこと。
※2 ニューモダリティ創薬…モダリティ(modality)とは、低分子薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子細胞治療、遺伝子治療といった治療手段の種別のこと。
ニューモダリティ創薬は、対象疾患に応じて最適なモダリティを選択し、創薬を進めること。
(出典:日経バイオテクhttps://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011900001/17/03/23/00095/)


サイエンスカフェに参加する意義を教えてください。

サイエンスカフェという場を通して、武田薬品工業さんや田辺三菱さんなど、普段接点のない他社の研究者の方とネットワークができていくというのはとてもいいことだと思います。
交流する機会が生まれ、ネットワークを築くことができています。
私ごとですが、ラクオリア創薬に入社する前は、湘南アイパークの中で別の会社に勤めていました。
縁があって転職することになったのですが、サイエンスカフェという居場所がアイパークの中にあったということが、会社を移る大きなきっかけになりました。おかげで今の仕事もスムーズにできているのかなと思います。
目指すのはボストンを超える
ライフサイエンスコミュニティ
湘南アイパークサイエンスカフェが今後目指していることを教えてください。

湘南アイパークサイエンスカフェは今、色々な研究者やコミュニティ、大学の先生方と繋がり始めています。今後、企業の研究者とアカデミックの研究者の垣根を越えるような、そういう取り組みになっていきたいなと思います。
ライフサイエンスのコミュニティといえば、ボストンです。ボストンには、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、そしてさまざまな製薬会社の拠点もあります。
私たちはボストンを、抜かさなきゃいけないですよね。大谷翔平選手じゃないですけど、「憧れるのはやめましょう」みたいな。実際に越えていくためにどうしたらいいのか、入居している研究者も何か取り組みができると、日本のためにもなると思うんです。