TENANTS VOICE

入居者の声

VOL.07

株式会社ジェクスヴァル

加藤 珠蘭

JURAN KATO

こんな会社です

難治・希少疾患を対象とした創薬ベンチャー。前臨床研究の後期段階まで進んだ開発候補化合物のdrug repositioningによって、短期間での上市達成を目指す戦略を取っている。現在、神経系の希少疾患と肺高血圧症にそれぞれ1つずつ開発候補化合物を保有するほか、初期研究課題を複数手がける。

ここがユニーク!

  • 製薬企業のAlやリアルワールドデータを活用した独自かつ戦略的ドラッグリポジショニング研究で見いだされた研究開発課題に取り組み、高い生産性を目指していること。
  • 治験開始の直前まで仕上げられた新規開発候補化合物にフォーカスすることで、成功確率を高めていること。
  • 開発や導出など豊富な経験を持つアドバイザーとともにグローバルなプロジェクトチームを結成していること。

希少疾患に苦しむ子供たちと家族の姿を間近で見て、アンメットニーズを痛感。
タケダとアイパークの起業支援体制に背中を押され、リスクを取って挑戦することを決意。

はじめに起業の経緯について教えてください。

2018年2月に、それまで武田薬品で携わっていたdrug repositioning研究のノウハウを生かして、EVPを利用して起業しました。

何かきっかけとなるできごとがあったのでしょうか?

武田薬品時代、長く所属していたがん研究の部署からdrug repositioningの部署に異動したのですが、そのとき初めて、子供の発達障害を引き起こす希少疾患の学会に参加して、とても衝撃を受けました。広大な会場で何万人という人が参加して開催されるがんの学会と比較して、希少疾患の学会は非常に小さいんですね。患者である子供たちと、ご家族、医師が集う小さな会場では講演中も後ろで子供が泣いたり介護を必要としている。学会の主催自体も患者団体で、私より若い親御さんたちが、みなさん我が子のために熱心に活動しているんです。
がんのようにすぐに命の危機がある病気と同じように、一生向き合っていかなければならない難病も等しく重要で、一日も早くお薬を届けることが大切だということを痛感しました。

それで、希少疾患の分野で何か役に立ちたいと思われたのですね。

はい。すぐに命の危険がない希少疾患の場合、開発の難しさや市場規模を考えたとき、企業でもなかなかゼロからリスクをとれないない現状があります。でも今回、EVP制度を通じたタケダからの経済的支援や、体枝の社員が磨き上げた質の高い候補化合物、アイパークのエコシステム構想などがあって、挑戦できる環境が整っていました。あとは、誰がリスクを取るか、だけ。じゃあ私がやってみようと、思いました。

ベンチャー企業の集まりに行くと、とてもオープンで、お互い助け合う文化がある。
アイパークで、そうした文化がこれからもっと育っていくといい。

武田薬品湘南研究所からアイパークとなって、いかがですか。

とても風通しがよくなりましたね。日本の大企業には、あまり開かれていない部分があるのかなと感じていたのですが、ベンチャーの集まりに行くと、みなとてもオープンで、お互いとても助け合っているんです。アイパークも、これからもっと、そんなふうになっていくといいなと思います。

アイパーク内の他の企業の方とも交流がありますか?

はい。ほかのベンチャー企業の方ともよく集まっています。オープンラポを共有している3社で、この間はピザパーティーをしました。知った顔がいつでも会える距離にいて、ちょっとした相談ができるのは、ありがたいですね。

起業間もない今は、会社そのものも、いわば実証実験中。
このやり方でうまくいくことが実証されたら、
新しいプロジェクトにもまた挑戦したい。

今後、どのような企業と協業していきたいですか?

創薬支援企業と研究開発を進めるだけでなく、持続可能なビジネスモデルを確立するため、様々な技術を持った会社との連携を通じてRepurposing Engineを構築して、パイプラインの拡充を目指していきたいと思っています。

今後の目標は何でしょうか?

まずは、今進めているプロジェクトを成功させることです。
今は、いわば自分達のPoC(Proof of Concept)を取っている段階。つまり、会社そのものの、実証実験中です。今のプログラムでお薬を出すことができたら、「ドラッグリポジショニングで希少疾患に薬を届ける」という方法が上手くいくことが示されるので、次のプロジェクトにもまた挑戦していきたいと思っています。

まずはひとつ、患者さんに薬を届けることができたら、それはとても大きいですね。

はい。人って、「自分の時間をどうシェアして生きていくか」ということだと思うんです。私は今まで、長い薬の研究の中でも初期ステージにあたるディスカバリーの研究者だったので、「挑戦すること」が仕事でした。これからは、より「届ける」ことに近いところで、自分の時間をシェアしていきたいと思っています。そのための方法を、試行錯誤しながら挑戦していきたいです。

PROFILE

株式会社ジェクスヴァル 代表取締役社長 加藤 珠蘭 氏

カリフォルニア大学ロサンゼルス校にてがんの分子標的薬を研究後、武田薬品工業入社。10年以上にわたり、がん創薬およびdrug repositioningの研究に携わる。2018年、株式会社 GEXVal設立。これまでの経験と人脈を活かして、「質の高い候補化合物」「効率的な研究開発戦略」を武器に、難治・希少疾患の創薬に挑戦中。